1+1は2とは限らない。ことと次第によっては10にも20にも、それ以上にも……なる。all at onceは、まさにそういう可能性を感じさせてくれるボーカルデュオだ。音域の広さと力強いファルセットが武器であるのITSUKIと、きめ細やかなハイトーンボイスが武器のNARITO、この2人が出会ったときに音楽のマジックが始まった。
そんな二つの声を活かすために選ばれた楽曲『12cm』はドラマチックなバラード。近くて遠い大事な人との距離を12cmという言葉に集約させたラブソングだが、デリケートな感情が色の違う二つの声で丁寧に紡がれていく。またガラリと雰囲気の異なるブラックミュージックのテイストもある『Take mo’ Chance』も印象に残るall at once、“みんなを巻き込む”ということから名づけられたこのユニットの今後、大いに期待したい。
【詳細】all at onceのインタビュー
取材・文 / 前原雅子
◆興味半分にオーディションを受けたら最終選考まで残ることができて。そのとき14歳だったんですけど、それがきっかけで歌手になりたいと思うようになって(ITSUKI)
中学2年生の年末年始に親族とカラオケに行ったときに、褒められて。それがきっかけで歌手という道を意識するようになりました(NARITO)
ーー お2人が出会ったのは東京の専門学校だそうですが、ITSUKIさんは小さいときから歌が好きだったのですか。
【 ITSUKI 】 音楽自体は小さい頃から好きだったんですけど、当時は歌手になりたいとは思っていなくて。むしろサッカー少年でした。
ーー すると将来の夢はサッカー選手。
【 ITSUKI 】 実は、学校の教員になりたいと思ってました。中学生のときは北海道選抜に選ばれたりしていたんですけど、圧倒的な才能を目にしちゃうと自分は無理だなと思ってしまって。なので、僕は中学の教員になってサッカーを教えたいなと思っていました。
ーー それがいつから音楽に?
【 ITSUKI 】 一緒にサッカーをやっていた友達に誘われて、興味半分にオーディションを受けたら最終選考まで残ることができて。そのとき14歳だったんですけど、それがきっかけで歌手になりたいと思うようになって。
ーー 考えたことはなかったけど、「俺……いけるのか?」と。
【 ITSUKI 】 はい、単純だったので「歌手になってビッグになるぞ!」「スターになれるんだ!」って。
【 NARITO 】 ははははは、わかるわかる。
ーー その当時、思い描いた憧れのスターというと?
【 ITSUKI 】 MISIAさんとか久保田利伸さんとか。その頃からR&Bが好きで、久保田さんの曲やマイケル・ジャクソンさんの「ロック・ウィズ・ユー」をよく歌っていました。当時通っていたボーカルレッスンの先生が2人いらっしゃったんですが、そのうち男の先生は札幌でR&Bの歌手をやってる方で、女の先生が黒人の方で。札幌に25年間住んでいるのにほとんど英語しかしゃべれない先生で。その2人の影響もあって、さらにブラックミュージックに興味を持つようになって、それこそアメリカだけでなくイギリスや韓国や、いろんな国のR&Bを聴きつつ、ブラックミュージックのルーツも辿って聴いて。
ーー そしてさらに勉強をしたくなって。
【 ITSUKI 】 そうですね。あとは、その頃は歌手になると決めていたので、刺激と夢を求めて上京しました。やっぱり夢を掴むには、東京でしか経験できないことがいっぱいあると思ったので。
ーー かたや宮崎出身のNARITOさんはどうですか。子どもの頃、将来の夢は歌手だったりしました?
【 NARITO 】 音楽は好きでしたね。幼稚園の送り迎えの車のなかで、お母さんが好きなDREAMS COME TRUEさんの曲をずっと聴いて、覚えて歌っていました。うるさいって言われるほど(笑)。そこから気づいたら音楽が好きになっていったんですけど、中学2年生の年末年始に親族とカラオケに行ったときに、DREAMS COME TRUEさんの「未来予想図」を歌ったら、僕が声を出した瞬間に「うわっ、うまいじゃん!」って褒められて。それがきっかけで歌手という道を意識するようになりました。
ーー 「あれっ? 俺、いける……?」って(笑)。
【 NARITO 】 思いました(笑)。その漠然とした気持ちが高校3年の進路選択のときにハッキリしたというか。車が好きだったので卒業後は自動車整備士になろうと思ってたんですけど、歌が好きっていう気持ちが忘れられなくて。夢を追いかけるなら東京に行った方がいいかなと思って上京することにしたんです。
ーー ITSUKIさんのようにレッスンに通ったりは?
【 NARITO 】 していなかったです。なので、歌を学び始めたのは本当に上京してからですね。
◆第一印象は怖かったですね。「なんてしゃべりかけよう……」みたいな(NARITO)
単純にほっそ~!と思いました。ご飯食べてるのかな、大丈夫かなって(ITSUKI)
ーー お互いの第一印象って覚えていますか。
【 NARITO 】 僕の地元は山に囲まれた自然豊かな場所だったんですけど、田舎民は都会の人を見たら一発でわかるんですよ、この人は都会出身だって。風貌というかオーラが違うので。そのせいか都会の人はちょっと怖いっていうイメージがあって。ITSUKIは札幌の出身で、札幌といったらけっこうな都会じゃないですか。だから第一印象は怖かったですね。「どうしよう。なんてしゃべりかけよう……」みたいな。
ーー だそうですけど。
【 ITSUKI 】 僕は本当に単純にほっそ~!と思いました。ご飯食べてるのかな、大丈夫かなって。よくいるじゃないですか、上京したてでご飯食べられなくなるとか、そういうのじゃないのかなって。
【 NARITO 】 そういうのではないです、単に体質ですね(笑)。
ーー ユニット結成はやはり音楽の好みなどが一致したからですか。
【 ITSUKI 】 NARITOと音楽の話をするようになったのは、ユニットを組んでからですね。同世代の人でブラックミュージックにハマる人があまりいなかったので、音楽の趣味が合う人もほとんどいなくて。なので、そういう話はしなかったというか。
【 NARITO 】 そうだね。それまではお互いに何を聴いているのか、全然知らなかったですから。
ーー ということは何をきっかけにユニット結成になったのですか。
【 ITSUKI 】 2人で出なきゃいけない学校のイベントがあって。相方を探しているときに、たまたま目の前にいたNARITOも相方を探していたので。僕が声をかけたのが始まりです。
ーー そのとき目の前にいたのがNARITOさんじゃなかったら。
【 ITSUKI 】 その人に声をかけてたと思います(笑)。
【 NARITO 】 実は僕、そもそも1人で歌うっていう考えはなくて。だからそのイベントの前から、ユニットでもバンドでもいいから誰かと一緒に歌いたいという思いがずっとあって。
◆一緒に歌った瞬間に直感でピンときたんですよね。自分一人でやるんじゃなくて、NARITOと2人で歌ったほうが大きいステージ立てるって(ITSUKI)
ーー だとしたらITSUKIさんに声をかけられたときは嬉しかった。
【 NARITO 】 嬉しかったです。二つ返事でやろうって言いましたね。でもITSUKIは上京する前から音楽をやってたので、同じ学年のなかでも頭一つ飛び出た存在だったし、みんな目標の一つとしてITSUKIを見てたところがあったんですね。なので「ITSUKIから声かけられた! どうしよう」ってなりました。目の前にいたからだけらしいですけど(笑)。
【 ITSUKI 】 いやでも、その後の展開が。イベントに向けて歌の練習をするのに、カラオケに行ったんですけど。一緒に歌った瞬間に直感でピンときたんですよね。自分一人でやるんじゃなくて、NARITOと2人で歌ったほうが大きいステージ立てるって。だから歌い終えたその場で「一緒にやってこう」と言いました。
ーー そのときに歌った曲、覚えてます?
【 ITSUKI 】 覚えてます。オリジナルラブさんの「接吻」でした。
ーー ITSUKIさんは、それまでは1人でやっていくつもりで?
【 ITSUKI 】 そうですね、ファンクやR&Bってなると、誰かとやるより1人でやっていくものだと思ってたので。
ーー NARITOさんも初めて2人で歌ったとき、「これだ!」みたいに思いました?
【 NARITO 】 いや、正直わからなかったです(笑)。その頃は知識もあんまりなかったし、それまではバラードばかり歌っていて、それが自分の中心にあるだけだったんので。ITSUKIとはちょっと感覚が違っていましたね。「まだ1曲しか歌ってないのに? あ……そう、なの? じゃあ、お願いします」みたいな感じでしたね。
ーー ある意味、一目惚れみたいなものだったんでしょうね。
【 ITSUKI 】 そうですね。ほんとにビビビっときましたね(笑)。
【 NARITO 】 ちょっと! 変な汗かくからやめて(笑)。
ーー それ以降は2人で活動するように?
【 ITSUKI 】 基本は学校内のイベントに出るくらいでした。そういうなかで自分たちの形っていうものも見えてきて。僕はもともとR&Bをやっていましたけど、2人でやるのであれば、そうではないなと思っていたんですね。そんなことを考えていたときにC&Kさんの「Y」に出会って、こういうバラードとか気持ちを伝える曲が合ってるんじゃないかと思って。そこで2人の方向性みたいなものが決まったんです。そういう僕たちを事務所の方が見て下さって、その不器用さとか真っ直ぐさがいいって言ってくださって所属する流れになりました。
◆スタッフさん、聴いてくれる方、みんなを巻き込むという意味で“all at once”という名前になりました(NARITO)
ーー all at onceというユニット名はどんなところからつけたものですか。
【 NARITO 】 名前は事務所の方と一緒に考えました。僕たちの武器は歌しかないので、みんなをそれに巻き込んで新しいムーブメントを起こせないだろうか、みたいなところから「みんなを巻き込む」ってすごくいいワードだねっていうことになって。スタッフさん、聴いてくれる方、みんなを巻き込むという意味で“all at once”という名前になりました。
ーー 「12cm」はドラマチックなバラードですね。
【 ITSUKI 】 最初にリリースする楽曲は僕たちの名刺代わりになると思ったので、どういう楽曲がいいんだろうって話し合って。アップテンポ、R&B、ファンク、ミディアム…とにかくいろんなスタイルの楽曲を試してみたんです。
【 NARITO 】 実際に歌って検討したので。プリプロを含めると何10曲っていう音源を試しました。
ーー すごい量の候補曲ですね。
【 ITSUKI 】 その結果、僕たちの純粋さとか真っ直ぐさを伝えるにはバラードがいいんじゃないかっていうことになって。でもバラードって一口に言ってもいろんなタイプがあるので、いろいろ試行錯誤するうちに、「みんなで作ってみるのはどう?」っていう話になって、スタッフさん含め全員でスタジオに入って鼻歌を歌ったりすることから始めて。それにコードをつけて、仮歌詞をつけてっていう感じでデモ音源を作っていったんです。どこにも複雑さがない、真っすぐに伝わる楽曲を意識して作りました。
ーー “12cm”というのはキスをするときに最適な身長差だそうですね。初めて知りました。
【 ITSUKI 】 そうなんですよ、僕らもタイトルをつけてから初めて知って。そもそも歌詞では男女の距離感について表現したくて、やっぱり数字かな?って思ったんですね。でも10cmとか15cmみたいに切りのいい数字はなんか違うな……と悩んでいたら、歌詞を共作してくださった矢作(綾加)さんから「12cmだったら絶妙でいいんじゃない?」という提案があって。そのあとなんです、身重差のことを知ったのが。なおさらいいじゃんとなって。
ーー アレンジは亀田誠治さんですね。
【 ITSUKI 】 デモ音源がある程度できたとき、この楽曲の純粋さを一番活かしてくれるのは亀田さんじゃないだろうか、っていうことになって。お忙しい方ですし、難しいだろうなと思っていたんですけど、引き受けていただけて、とても嬉しかったです。
◆NARITOがすごくハイトーンが出るので、それを活かすための音域を考えていきましたし、僕もコーラスを含めてNARITOの声に寄り添うことを考えていきました(ITSUKI)
ーー こうして話しててもかなり声が違われますが、「12cm」もツインボーカルが際立ってくるような楽曲ですね。
【 ITSUKI 】 そうですね。基本的にNARITOがすごくハイトーンが出るので、それを活かすための音域を考えていきましたし、僕もコーラスを含めてNARITOの声に寄り添うことを考えていきました。
【 NARITO 】 この楽曲、歌ってみるとなかなか難しくて。キーも高めなんですけど、曲も6分以上ある、どんどん壮大になっていくバラードなので、ボーカルのバランスを整えていく必要があるんですよね。
【 ITSUKI 】 弦楽器が盛り上がってくるタイミングで楽曲もボーカルも盛り上がっていくので。かなりダイナミックな曲になっていると思います。
ーー キーのことで言うとNARITOさんは高いところが得意で、ITSUKIさんは全体的にレンジが広いほうですか。
【 ITSUKI 】 NARITOはハイトーンが武器だと思いますし、僕はファルセットも出るほうなので裏声も武器になるというか。なので「12cm」はお互いのいいところが出せた楽曲ですね。
◆ITSUKIにグルーブの感じとか教えてもらいながら練習することで、自分のなかでひとつ壁を越えられたというか(NARITO)
ーー カップリング曲の「Take mo’ Chance」はITSUKIさんがよく聴かれてきたタイプの曲なのでは?
【 ITSUKI 】 アニメ(『ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。』)のオープニング曲に合うだろうということで、ロックテイストの曲も試してみていたんです。その中で、試しにファンクっぽい曲をやってみたとき、「これじゃん!」ってなって。
【 NARITO 】 僕はそれこそバラードしか歌ってこなかったので、こういうタイプの曲は初めてで。最初に聴いたときは「かっこいいな。早く歌いたいな」って思ったんですけど、いざ歌ってみると、なかなかしっくりこなくて。ITSUKIにグルーブの感じとか教えてもらいながら練習することで、自分のなかでひとつ壁を越えられたというか。そのぶん思い入れもありますね。今となっては早くライブでやってみたいと思うくらいです。
ーー この曲は曲調と歌詞のバランスも面白いですね。
【 ITSUKI 】 歌詞では“ありのままの自分でいいんだよ”っていうことが書かれているんですけど。
【 NARITO 】 サウンドのおかげで重たくならずに、サラッと歌詞が入ってくるので。そこがいいですよね。
◆僕たちは不器用なので、必死にがむしゃらにやるしかないから(笑)(NARITO)
自分たちの武器であるまっすぐさ、純粋さを伝えていけたらと思う(ITSUKI)
ーー もうすぐ「12cm」がリリースされますが、実感はありますか。
【 NARITO 】 ジワジワと感じてきてはいるんですけど、まだ実感はあまりないですね。でも僕たちは不器用なので、必死にがむしゃらにやるしかないから(笑)。まっすぐに歌を届けることを常に頭に置いて、まずは目の前にあることから大事にしていきたいと思ってます。で、その先に大きなステージとかがあったらいいなって思いますね。
【 ITSUKI 】 僕もまだ実感はあまりないですけど、自分たちの武器であるまっすぐさ、純粋さを伝えていけたらと思うので。そのためにもいろんなことにチャレンジしていきたいなと思っていますね。
all at once まっすぐな歌声と温かいハーモニー。偶然の出会いから始まったボーカルデュオのストーリーと「12cm」に込めた想いを訊く。は、WHAT's IN? tokyoへ。
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April 28, 2020 at 10:01AM
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